絵本伝道家・縁の絵本レビューコラム

緊急事態宣言は、解除されたのにスカッと爽やかな日々とはなりません。私は、ふと絵本を手に取り、読むというより眺めるひとときが多くなりました。

図書館で読み聞かせをすることができなくなっているのですが、絵本を読んでいるとざわざわした気持ちが静まり元気が出てきます。コロナで不安なのは子供さんも一緒です。是非小さなお子さんはお膝の上で、高学年のお子さんは隣に座って絵本を楽しんで欲しい。

そんな絵本を3冊紹介します。

先ずは、五味太郎さんの『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』。

わにさんが虫歯を治しに歯医者さんへ行きます。わにさんは歯医者さんの椅子に座り、歯医者さんはわにさんを見て、お互い

こわいなあ……
こわいなあ……

と言います。
(引用元・2018年3月2版19刷、作・五味太郎、発行所・偕成社)

違う立場なのに同じ言葉が出てきます。歯医者さんに治療にいくのが億劫なのは大人も子供もわにさんも同じですね。嫌なことをやらなけばならない時、誰もが逡巡し覚悟を決めます。そして覚悟をしたはずなのに上手くいかないと苛立ちますが、また思い直して腹を括る。わにさんとはいしゃさんの表情や短い言葉のやり取りにくすっと笑えて何故か勇気をもらえます。お子さんといれば是非とも歯磨きの前に読んであげてください。

2冊目はエリック・リトウィンさんの『ねこのピート だいすきなしろいくつ』。

ねこの ピートは あたらしい
しろいくつで おでかけ。
うれしくて
しろいくつ
かなり さいこう!

そのあと彼は苺の山に登り、靴は赤色に染まってしまいますが、

あかいくつ
かなり さいこう!

(引用元・2019年10月第20刷発行、作・エリック・リトウィン、絵・ジェームス・ディーン、訳・大友剛、文字画・長谷川義史、発行所・株式会社ひさかたチャイルド)

と、ピートは、「今」を楽しむ天才です。変化を恐れません。自分を満たしてくれるのは、モノ(自分以外の何か)ではなく、自分の考え方なのかもしれません。大切な物だからこそ執着心がくっついてくる。その執着を手放してみれば自由が手に入る。お子さんに問いかけるように読んで返事が返ってくるようになると、繰り返すのがリズミカルで読んでいても楽しいですよ。ポジティブなピートと一緒に歌えば間違いなく元気になれます。

最後はヨシタケシンスケさんの『みえるとか みえないとか』。主人公は宇宙飛行士で、さまざまな星へ調査するのが仕事という内容です。

このほしの ひとたちは、
うしろにも 目があるので
まえも うしろも いちどに みえ るらしい。「うまれつき ぜんぶの目がみえ   ない」っていう ひともいた。
そのひとの せかいの かんじかたは、
ぼくと ずいぶん ちがっていた。

(引用元・2018年7月20日初版発行、さく・ヨシタケシンスケ、そうだん・伊藤亜紗、発行所・アリス館)

そもそもみんな違います。違いを知りたくて話してみると同じところを発見したり。自分のあたりまえは、他の人のあたりまと違っています。違いを知れば自分の世界も広がっていく。ヨシタケシンスケさんの絵は細かいところが面白いので、何度、読み返しても楽しめます。絵本は、子供の本と決めないで読んでみるとガチガチに凝り固まった頭がやわなかくなります。

絵本の世界には、withコロナと言われる新しい日常をおもしろく生きていくヒントがたくさんある気がしてならないのです。

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